【完全保存版】印刷用紙選びの失敗しない方法~オフセット印刷編

はじめに~印刷方式の違い

一口に印刷とは言っても色んな印刷方法があり、そのなかで対応出来る用紙も変わってきます。なぜ対応できる用紙が変わってくるのかというと、大まかにオフセット印刷はインキを紙に転写、オンデマンド印刷は粉体トナーを紙へ直接焼付、大判インクジェット印刷は超微細インクを紙に直接噴射と印刷方式自体が異なります。このため、それぞれの印刷方式に合うように開発された用紙でなければ、きちんとした商品が印刷出来ないのです。

印刷方式適した用紙
オフセット印刷コート紙、マットコート紙、上質紙、アートポスト、その他特殊紙も一部可
オンデマンド印刷コート紙、マットコート紙、上質紙、アートポスト、タック紙、その他特殊紙も一部可
大判インクジェット印刷マット紙、光沢紙、微光沢紙、合成紙、タック紙、各種フィルム
それぞれの印刷方式に合った用紙

目次

1.オフセット印刷に対応した用紙の選び方

(1)用紙の素材で選ぶ

用紙の素材には、主に以下の種類があります。

原材料特徴用紙
木材パルプ系木材パルプを原料として作られ安価で扱いやすい。最もよく使用されている用紙。オフセット印刷塗工紙やインクジェット用紙など
竹・廃食品系竹パルプや廃棄米などを原材料とした用紙。SDGsへの対応から用いられる事が増えています。竹紙、米紙
再生パルプ系古紙や廃棄物を原料として作られます。環境に優しく、リサイクルにも適しています。再生塗工紙、再生上質紙など
化学系樹脂やビニル素材など、特殊な機能性を付与した用紙です。合成紙、タック紙、ターポリンなど
用紙の素材一覧

木材系用紙は、木材パルプを原料として作られ、オフセット印刷で利用される用紙で一番一般的なものですね。大量に生産されているので、価格も安価ですし品質も安定しています。環境対応型の用紙が増えつつあるものの、依然として7~8割の印刷物はこの木材系パルプ紙を利用しています。

竹・廃食品系用紙は、竹パルプや廃棄米を原料として作られ、木材系用紙に比べて強靭な素材となります。印刷の仕上がりも高品質ですが、印刷所によっては対応が難しい場合もあるので事前に確認されることをおすすめします。

再生系用紙は、古紙や廃棄物を原料として作られます。環境に優しく、リサイクルにも適しています。ただし、木材系や竹系用紙に比べて、品質が劣る場合があります。

化学系用紙は、化学的な処理を加えて作られます。抗菌性や防水性、防炎性などの特殊な機能性を付与しているので限定的な用途で使われます。その分対応する印刷機も限られており、印刷のクオリティもオフセット印刷ほど高い水準にはありません。

SDGsへの取り組みをPRされる場合は、再生紙や廃棄物再生紙を利用されると良いでしょう。一般的な用途で利用するのであればコート・マット・上質系のいずれかをお選びいただく方が、コストや納期の面で安くて早く仕上がります。

(2) 紙の厚さで選ぶ

高級感があるデザインであっても、極端に薄い紙で刷ってしまうと安っぽい印象はぬぐえません。思った以上に人間は五感で物事をとらえる性質があるので、視覚だけでなく実際に手に取って触ってみた瞬間の肌触りなども表現の一部とトップデザイナーは知っています。重さのある用紙は高級感があり、しっかりとした印象を与えます。逆にコストをかけずらい場合は、紙の薄さ(安っぽさ)をデザインでカバーするためにあえて余白を多用したり色数を減らしたりして、少しでも上質感を出せるようにされる方もおおいですね。

当社もクライアント様にご提案する場合、デザインを事前に見せていただいてそこから最もデザインの価値を高められるような用紙の選定から行っています。

とはいえ駆け出しデザイナーさんや、あまり印刷になじみのないお客様にとって厚みと言われてもピンと来ないと思います。その上、印刷用紙の厚みは表現が独特なんです。厚みといえば通常はmmやcmなんですが、印刷用紙の厚みはkgであらわされます。この辺の解説は下記の記事をご覧ください。

オフセット印刷用紙の厚み


上記のポイントを踏まえて、用紙の厚みを選ぶことは、印刷物の印象を決定する重要な要素です。以下に、用紙の厚みを選ぶ際のポイントをまとめます。

  1. 薄い用紙  一般的には50〜70㎏程度で、主に書類・チラシ・冊子などに使用されます。軽くて扱いやすく、印刷コストも安く済むため、大量印刷に向いています。
  2. 普通の用紙  一般的には90〜110㎏程度で、名刺・封筒・パンフレットなどに使用されます。しっかりとした手触りがあり、高級感のある仕上がりになります。
  3. 厚い用紙  一般的には135〜180kg程度で、ポスターやカードなどに使用されます。厚みがあることで、高級感があり、丈夫で長持ちするため、特別感のある印刷物に向いています。

これらのポイントを考慮しながら、用紙の厚みを選ぶことで、印刷物の質感や存在感を引き出すことができると思います。用途に応じた適切な厚みを選びましょう!

まだ一度もオフセット印刷を利用した事が無いというデザイナーさんは、是非用紙サンプルを請求してみてください!

(3)用紙の色味で選ぶ

用紙にインクが転写される前の紙の地色も、実はデザイン性に大きな影響を及ぼします。黄色味が強い用紙もあれば青味がかったものもありますので、そこは用紙サンプルで確認しておくと刷り上がりイメージが全然違ったなんて事にはならずにすみますよ!

ちなみにオフセット印刷の用紙は主に白色やクリーム色、アイボリー色の用紙が使用されます。例えば、白色の用紙は清潔感やシンプルさを表現でき、クリーム色の用紙は暖かみや落ち着きを感じさせます。また、アイボリー色の用紙は高級感や上品さを演出することができます。このように紙の地色を考慮に入れてデザインすると、デザインとの相乗効果も生まれますね。

それ以外にもクライアントの業種によって提案を変えるというもの良いでしょう。例えば、カフェやレストランのメニューにおいては、落ち着いた雰囲気を出すためにクリーム色の用紙が使用されることが多いです。逆に、派手なイベントのチラシにおいては、鮮やかな色味を出すためにより白さが強い用紙が使用されることが多いです。

是非紙の地色、気にしてみてみてください。

(4)用紙の表面加工を考える

印刷物の表現にさらに幅を持たせる事が出来るのが、表面加工のメリットですね。ただ表面加工は印刷以上にコストもかかってくる事と、加工と用紙の相性が悪い場合もありますので事前にテストされる事をおすすめします。

UVプリンターで頂点UVニス – Apex Digital Flated UVプリンターとDTF …

UVニス加工

紫外線で硬化する塗料を塗り、表面を硬く仕上げる方法です。透明な塗料が硬化する事で、グロッシーな表現が可能となっております。光沢系の加工の中では最高級な加工になるので、ここぞという勝負の施策の時に利用されるお客様が多いです。また用紙を選ぶ際のポイントとして、ニス引きとかあえて逆の効果を狙うと良いでしょうか。例えば光沢感のニスであれば、マット系の紙を選ぶ。マット感のニスであればコート系の紙を選ぶといった具合です。

ラミネート(PP)加工

表面に薄いフィルムを貼る加工の事です。印刷物を傷つきや水濡れ、湿気から守る役割があります。これ以外にも、写真やデザインの発色性を高める、少し落ち着かせるという効果を期待して追加する場合が多いですね。コート系の紙にグロスPPを貼ればより鮮やかに見えますが、逆に少し落ち着いた高級感のある印象を出したい場合にはあえてマットPPを貼る場合もあります。この辺はお好みにはなりますが、用紙の特徴と逆のフィルムを選ぶと以外と良い仕上がりになります。

エンボス加工

文字や模様を凹凸で表現し、立体感を出す加工の事ですね。一昔前までは印刷と言えば、すべてこのエンボス(活版印刷とも言います)でした。一時期は廃れたものの、職人の技術がダイレクトに品質に出るため、最近はまたデザイナーやクリエイターから指示を集めていますね。エンボスを押す場合は、ある程度用紙の厚みがないと加工自体が出来ません。なのでコットン系の用紙を選択される方が多いですね。ただ残念なことに、弊社ではエンボスはまだ対応しておりません。。。

箔押し加工

金・銀・色の箔を押し付けて、光沢感を出す方法。UVニスとと共によく利用される表面加工の一つですね。身近でも見たことはあると思いますよ!この写真のカカオの形状が箔押されていますよね。印刷に携わる者として、このパッケージの豪華さはすごく気になった事を覚えています。コストもそれなりにかかるので、単にばら撒く用のチラシやパンフなどではなかなか利用されません。商品やサービスのブランディングやコンセプトを、ユーザーに正しく伝えるための手段としてカタログや冊子を作りたい。そして高級感を出したいんだという場合に、弊社でもご提案の候補に入る加工になります。箔の部分をより際立たせるためにも、表面はマット調の用紙にした方が良いでしょう。

デザイナーさんなら一度は憧れるエンボスやニス、箔押しですがやはり印刷物と比較しても加工費の方が高くなるなんて事も間々あります。予算が合わない、納期が間に合わないなんて事にならないよう、表面加工がある案件は事前に印刷所へ相談される事をおすすめすます。

ちなみにまごころ印刷アルプスPPSでは、エンボス以外の表面加工はお承り致しております。納期やコスト感でなかなか手が出しづらいなという場合は、代替案としてオンデマンド印刷スペシャルトナー(疑似的なニスや箔押し)というのもございます。こちらも是非ご覧になってみてください。

3.番外編~推し紙

予算感や納期、デザインで表現したい事やクライアントの意向など、デザイナーさんが考えなければいけない事は山ほどあってそこに印刷の知見も必要になってくると日々大変です。そんなデザイナーさんの癒しになるかもしれないのが、竹尾さんの紙見本ショップです。

竹尾見本帖

ここは是非一度は訪れてみてください!本当にいろんな表情の紙が置いてあってカラフルで、デジタル表現よりもやっぱり私は紙が良いなと改めて思います。最近は推し活なんて言葉も流行っていますけども、我々デザインや印刷に携わる人間は推し紙を見つけると日々の仕事にもちょっとした楽しみになりますね~。

4.まとめ

オフセット印刷において用紙を選ぶ際に、重要なのは仕上がりイメージに合わせた用紙の選び方です。例えば、マット紙はシックで上品な印象を与えますが、写真や画像を印刷する場合には発色が悪くなることが多いです。一方、光沢紙は鮮やかな発色が得られるため、写真や画像を印刷する際にはよく使われます。ただし、光沢紙は指紋や汚れが目立ちやすいため、使用場所によっては向かない場合もあります。また、用紙の厚みによっても印象は変わってきます。厚みがあればその分高級感は出せますが、コストを抑えたい場合は薄手の用紙の方が良いでしょう。

という事で、用紙の選びかた-オフセット印刷編でした。

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